#深夜の俺の戯言

昼間の戯言でも深夜テンション。

ある一夜の記録

【2018年2月28日】

 

【16:16】1

横浜駅に着いた彼は、駅構内にある区役所出張所へ赴き、戸籍謄本を得た。横浜市栄区以下の番地を知らなかったが故、父に尋ねて暫し待つ。

受け取った戸籍謄本をまじまじと眺め、亡き祖父の名前を初めて知る。

 

【16:50】1

横浜駅西口を出てすぐのマクドナルドに彼はいた。時間帯柄女子高生も多く、狭い敷地内の急な階段を見上げるとそこは極楽で、4枚を記憶の宝箱へとそっとしまった。

明らかに馬鹿な女子高生が馬鹿な話題で盛り上がっている姿に可愛げを覚える頃、ふたりは合流した。戸籍謄本と変態は、開店前の鳥貴族へと足を向ける。

 

【17:00】2

オープン直後の鳥貴族はとても静かであった。午前中に都内で就活を終えたスーツ姿の変態は喫煙席を選ぶ。彼は家に帰るまでに一箱開けてしまいたかった。戸籍謄本も彼から数本譲り受け、久々に煙草を吸った。

生ビールをふたつ頼み、キャベツをひたすらにおかわりする。ここで、同級の女を誘うことに成功。急いで2杯目を飲みきり、余ったヤニを吸いきり、足早に女を迎えに行く。

 

【18:15】3

女は1時間しか居られない。何故ならこのあと、新橋の男に会うからである。浮いた1時間は手頃な男からの手頃な誘いで埋まった。

一行は西口近くの甘太郎に入る。女はカシスウーロンを頼んだ。酒は強い方ではない。半分飲んだあたりから下世話な話に興じる。飲み始めは、新橋で男に会って奢らせたら帰ろうと思っていた。しかし下衆な話が咲くにつれ、帰らなくていいような気がして来た。

 

【18:45】4

変態に呼ばれた彼はここで店に合流する。変態は、女は来ないものだと思っており、布石を打っていたのだ。

布石は当時、あまり女とは話さなかった。客観的に女が美人であることは事実で、布石は自身が布石と自覚しながらも、その幸運と誘ってくれた変態に感謝した。

戸籍謄本は澪を頼み、女に手酌をせがんだ。乗り気な女は皆に手酌をし、阿呆な男共はそのエンタメにひどく興じた。

 

【19:30】3

女が新橋に抱かれに行くというから、男共は横浜駅までの「お見送りジャンケン」をし、布石がその権利を勝ち獲った。

女は1,000円を払おうとし、3人は拒否をした。それでも机にお札を置くから、その1,000円の命運は布石に託された。

しかし店を出た布石は女のオーラに圧倒され、呆気なく店の前で見送りを終えた。さらに情けのないことに、英世を握り締めて帰って来る。

 

【19:50】4

布石に呼ばれた彼はここで店に合流する。彼はこの春から文学をしに大学院へ通う。

文学は、女の顛末を肴にビールを飲む。文学と皆は久しぶりの再会で、女の気配の消えた卓では下衆い会話が加速する。

 

【20:20】5

戸籍謄本に呼ばれた彼はここで店に合流する。全く別件の飲み会で横浜にいた彼は、運悪く捕まってしまった。

悪運もまたビールを飲む。

 

【21:15】6

戸籍謄本に呼ばれた彼はここで店に合流する。浪人して東大に落ちて以来、同級生の前にはめっきり姿を見せなかったが、今日はどういう風の吹き回しか行こうと思った。

かくして役者は出揃った。

 

浪人もまたビールを飲む。だがそんな浪人、女に振られて大学院進学に支障が出ている。酔っ払いどもにはそれが大層愉快で、次なる止まり木へ移ることにした。

 

【21:30】6

横浜に雨がちらつき始める。

面子界隈で御用達の安い中華屋に落ち着き、再び話に花が咲く。

彼は浪人中、ホテルに泊まっていた。親心で少し多めに包んだお金を、何を間違えたか、浪人はデリヘルを呼ぶために使った。

それは馬鹿な男の心を鷲掴みにし、皆の酒は進む。

 

【23:15】4

雨足は徐々に強まる。

布石と悪運はここで帰るというから、残った4人は次なる店へと向かい、面子界隈で御用達の安い水産屋に落ち着いた。

かつての同級に極めて面倒な電話をするなどしてだらだらと飲んでいたら、店から締め出される。

 

【2018年3月1日】

 

【3:00】4

二つ下のフロアにあった白木屋に拠点を移す。

札幌ラーメンを4人前頼み、此度は延々と上がり茶を飲む。

酔いもいい具合に回り、量子論から現代文学まで、ぐちゃぐちゃの話をしながらラーメンをすする。

まるで永遠に続く夜も、明けようとしている。

 

【5:00】4

雨はピークを迎える。

ダッシュで開店直後のはなまるうどんに転がり込んだ。美味いとも不味いとも言えない微妙なうどんはたったの130円で、酒で爛れた消化器官を優しく潤す。

向かいのドンキで傘を買い、横浜駅へ。

酒屋の車が空いた生樽を回収している。一晩でこの街の胃袋に入った生ビールはどれくらいかしらん。そんなことを考えては眠気が襲う。

 

【5:45】2

変態と文学はJR、戸籍謄本と浪人は相鉄線に乗る。人波に逆らいホームへ上がり、戸籍謄本は日記を書き始めた。

 

【6:50】1

駅に着く頃、雨は止んでいた。

戸籍謄本は無性にこの一夜を残したかった。

シャワーを浴びる父に気付かれず静かに着替えてベッドに入り、書きかけの日記を完成させる。