#深夜の俺の戯言

昼間の戯言でも深夜テンション。

Code: A Major

蝶の只一度の羽ばたきが嵐をも呼ぶ。

 


キャパ600、着席率60〜70%の小さなホールで感じた残響と食い気味な拍手は、何処かとんでもない方向へ、俺の人生をゆっくりと運び始めたのかも知れない。

 


去る8月18日、博多のFFGホールという地銀所有のホールへ歌いに行った。3月ぶりの本番である。

"四大学 Joint Concert 2018"と銘打たれ、九州大学立命館大学岡山大学、そして筑波大学男声合唱団4団体が結集した。

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ここ2年は陰キャの巣窟もとい筑波大学男声合唱団メンネルコールを中心に歌い、10人弱の小規模な合唱をしていたが、入団後初の合唱ジョイコン、やはり100人を超える漢のPowerは凄まじい。忘れかけていた合唱の醍醐味の一つを再確認したのだった。

 


しかし此度最も強く感じたのは合唱の素晴らしさではなく、青春と後悔、これに尽きる。

 


日々に歌い、いざ本番ステージの上では俺こそが主役と息巻いて僕は歌うが、毎度のことながらこれは至上の喜びである。命を燃やしている感じがする。

 


適度な緊張感の中に音楽は始まり、興奮と高揚と照らすスポットライトの熱は身体を温め、最後小節のAメジャーは豪傑に響き、熱狂の拍手の中で緞帳は下りた。

たった9人でやり遂げたのだ。凄まじい達成感があった。どよめく拍手と又聞きした我々への評価が、それは名演であったことを裏付けしていた。

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共に時間と労力を費やした連中と一緒に喝采を浴び達成感を得たとき、「ああ、青春してるなあ」と感じた。俺の青春はいつも舞台の上にある。

学生最後の夏に、漸く初めて、学生らしい青春の感動を覚えた。同時にこれが最大の後悔でもある。

 


驚くべきことに、2014年に入学して以来、唯の一度も青春の感動を味わっていなかったのである!!これは由々しき事態、なんて勿体無いことをしてしまったのだと反省している余裕もない。俺が学生でいられるのはあと半年しかないのだから。

 


後悔はその原因を探らせた。

愛校心の欠如、これが最たる原因であろうと結論づいた。

 


愛校心無くして、学生はどうやら青春を得ることができぬらしい。学生は当然学生でいる時間が一番長いのであるから、そこへの所属意識、すなわち大学への所属意識がなければならない。

ある社会への所属意識の薄さが精神的不健康を呼び込むことは、先の鬱で学んだことだ。

 


正直言って、あまり筑波大学が好きではなかった。交通の便は悪いわ、遊ぶところはカラオケとイオンしかないわ、冬は寒いわなんだの、それから高校に比べて楽しくないと思っていたり、そもそも第一志望ではなかったことが大きいことをここに告白する。

 


入学直後は割と学歴コンプに苛まれもしたが、自然に消えたと思った。しかし学歴コンプがもたらしたネガティブなイメージが問題だった。それらを自虐的に用いながらも、本心で大学を嫌っていた節がある。

 


それから陰キャで真面目でオタク気質の筑波では、不真面目で不健全な大学生の遊び方や楽しみ方が身につき辛い。1年次でヤバめのサークルに捕まり以後サークル活動を怠慢していた罰である。

これではいつまでも輝かしいかつての高校時代の青春を求めるのも無理はない。求めるものが違った、大学生には大学生の青春がある。

 


そんなワケで筑波大学が嫌いだった。

斜に構えて筑波の風を避けつつ、度々横浜で飲んでいた。

 


ところがどっこい、ジョイントコンサート様様である。

 


他の大学がいる前で、筑波大学の名を背負ってステージに立つこと。

東京文理科大学 高等師範学校 校歌を誇り高く歌い継ぐこと。

 


そんな簡単なことで、遠く離れた九州から、俺の愛校心は筑波に芽吹いた。

 


大君の宮居近く、

桐の葉と照り明るもの、

母校よ、大塚、甍 巍々たり。

教化の國本、眞の智徳、

培へ、育てよ、理想に生きつつ。

與へよ、総てを、没せよ、己を。

愛なり 道なり、至上の善なり。

(北原白秋作、校歌3番より)

(ちなみに作曲は山田耕筰)

 


かつての東京教育大学の諸先輩方が胸に抱いた誇りを、その名は変われど校歌を通じて受け継いだ。校歌のあらましやその意味は、先輩からのありがたい説教から学ぶものである。今一度感謝を。

 


ついでに大学生の遊び方を再確認した。

 


酒。男しかおらぬのならば一二も三も酒。

百余人の大宴会で飲めや歌えの馬鹿騒ぎ、焼酎空くまでラッパ飲み、「ありのままで」と宣いながらおちんちんを丸出し、おもむろに(上半身)裸になった男どもが抱き合う。

ありがとうジョイントコンサート。

ありがとう九州大学

ありがとう九州の酒と肴。

 


かくして、ジョイントコンサートで僕は学生の青春を満喫した。

 


しかしこの身分もあと半年。

味わいたいのだ、可能ならばもう一度、この青春の感動を、贅沢を言うならオーディエンスの喝采と共に。

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今はひたすら、青春に飢える獣だ。